極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
内線が切れると私は素早くイスから立ち上がった。

瞬間、身体がふらっと揺れて、とっさにデスクに手をつく。眩暈がするものの、お客様を待たせてはいけない。相手は、千紘さんの婚約者だと名乗っているのなら、なおさら失礼のないようにしないと。

私は、なんとか身体に力を入れて受付へと向かった。

すると、私の姿を見つけた西野さんがすぐにかけ寄ってくる。


「笹崎さん。社長の婚約者の方ですが、あちらのソファにかけていらっしゃいます」

「わかりました。ありがとうございます」


そちらに視線を向けると、ロビーにある待合用のソファで、こちらに背を向けて座っている女性の姿が目に入る。

あの方が、千紘さんの婚約者……。


「あとは私が対応しますので」

「お願いします。……笹崎さん、大丈夫ですか? 顔色があまり良くないように見えますが」

「大丈夫です」


心配そうに私の顔を見つめる西野さんに笑顔で答えてから、千紘さんの婚約者のもとへと向かった。
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