誘拐は激甘生活の始まりIII
「今日は雨で、せっかくのティータイムも部屋の中ですね〜」

オリビアがそう言い、紅茶に口をつける。杏菜も「そうね。晴れていたら中庭のバラの花が見れたのに」と頷き、マカロンに口をつけた。今はティータイムの真っ最中だ。互いに話しながらお茶を楽しむ。

「あら、そのネックレスはどうされたんですか?」

オリビアに訊ねられ、杏菜はそっと首元に触れる。杏菜の細い首にはクラリネッタ王国の国花であるカーネーションをモチーフにしたネックレスが付けられている。

「ああ……。これはダミアン様からいただいて……」

杏菜はダミアンからネックレスをもらった時のことを思い出し、苦笑しながら話した。

ダミアンが急遽イギリスへ行くことになり、「行きたくない!」と杏菜に抱き付いたのだ。杏菜は「ダミアン様にイギリスの多くの人が会いたがっていますよ」と説得を続け、ダミアンは「杏菜がそう言うなら」と行くことを決めてくれた。
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