誘拐は激甘生活の始まりIII
杏菜の部屋にリオンはそれからも時々遊びに来てくれた。そのたびに杏菜は日本のことを話し、リオンは旅行で訪れた国々のことを話してくれる。海外旅行に行ってみたいと思っている杏菜にとって、リオンの話は刺激的だった。
「わあ!このお料理おいしそうですね!この民族衣装はとても綺麗!」
「でしょ?杏菜ならそう言うと思った」
杏菜が笑うとリオンも嬉しそうに笑う。しばらく写真を見ていた杏菜だったが、不意にその手が掴まれる。
「リオン様?」
リオンは頬を赤く染め、杏菜を見つめていた。そしてその口がゆっくりと動く。
「杏菜、君と世界中を旅してみたい。俺と一緒にーーー」
「何でリオンがこの部屋にいるの?」
リオンの言葉は冷たい声でかき消される。杏菜がドアの方を見れば不機嫌そうな様子のダミアンがいた。今日が帰ってくる日だったと杏菜は思い出し、「おかえりなさい、ダミアン様」と微笑む。
「ただいま、杏菜」
杏菜の声を聞くとダミアンの顔は少し穏やかになった。しかし、杏菜を抱き寄せてリオンを睨み付けていた。