モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
そしてあっという間に、フィーナの占いサロン初日の朝を迎えた。
宣伝したにも関わらず、まったく話題になってなさそうだけど、どうなることやら……。
不安を抱えながら、今日もテキストを片付け倉庫へと向かう。
使えないものは捨て終えたので、最近は掃除がメインだ。ただ汚れがあちこちにこびりついており、なかなか一筋縄ではいかない。
でも、目に見えて綺麗になっていくので、慣れれば掃除もそこまで苦痛ではなくなった。
疲れて休憩していると、私はふとレジスのことを思い出した。
――昨日はサロンの最終準備をずっとしていたから、倉庫にこなかったのよね。……この前と同じ時間帯だし、今日もいるのかしら。
そーっと扉から外を覗いてみる。すると、前回と同じ場所にレジスの姿を発見した。
でも、今日はどこか様子がおかしい。落ち着きがなく、やたらきょろきょろしている。
もしかして、猫を捜してる……?
その後もずっと陰からレジスの様子を見守っていたが、ずっとなにかを捜している。立って動いてはまた戻って……その繰り返しだ。
私はだんだんいたたまれない気持ちになり、無意識にため息をついていた。だってレジスが捜している猫は、私が動かなければ絶対に見つかることはないんだもの。
――仕方ない。レジスの癒しのために、また一肌脱ぐしかないわ。
倉庫で獣化し、私は白猫の姿でレジスのもとへ駆け寄った。こんなに連続で獣化するなんて初めてだ。
「あっ……!」
レジスは私を発見するなり、喜びの声を上げた。
キリッとした顔つきは一瞬で綻び柔らかくなる。レジスのこんな顔が見られるのは、学園中で私くらいだろう。なんだかちょっと優越感だ。
「お前は飼い主はいるのか? でも、首輪をしていないな……野良猫か?」
「にゃー」
「そうか。野良猫なんだな」
つ、通じた。
「俺、お前の名前を考えてきたんだ」
屈んで私の頭を撫でながら、レジスは照れくさそうに言う。野良猫に名前を考えてくるとは、よっぽどこの前のことがうれしかったのだろうか。
どんな名前を考えたのか、まったく想像できない。私はうきうきしながらレジスの言葉を待った。
「シピ、っていうのはどうだ? お前、ひとを翻弄しそうだから。小悪魔って意味でシピ」
レジスの口から小悪魔なんて言葉が聞けるとは夢にも思わなかった。それにシピって……響きもいいし、なかなかかわいい名前じゃない。
「にゃっ!」
気に入った! というように、私はレジスの膝にすりすりと頬を寄せる。レジスはほっとした顔を見せて、今度は私の背中を毛並みを確かめるように撫で続けた。
モフモフに癒されるレジスを見て、もはや私が癒されている。私はそのまましばらくのあいだ、レジスのあたたかくて大きな手を堪能した。
「いつも昼休みはここにいるから、ここでお前を待ってる。いつでも会いにきてくれ」
「……にゃあ」
「ふっ。いい子だ」
ちゃんと返事をしたことを褒めるように、よしよしと頭を撫でられた。
――そんなことを言われると、期待を裏切れなくなるじゃない。
前回の失敗を学び、私は早めにレジスの前から退散する。レジスは私がこの辺りにいる野良猫と確信したからか、追いかけてくるようなことはせず、かわりに名残惜しそうに手を振ってきた。
教室に戻ると、あんな顔絶対見せないんだろうな。獣化するリスクと比べても、あんなレジスを見るとなんだか得した気分。
私は倉庫に戻ると、レジスと鉢合わせにならないよう警戒しながら、また寮へと戻ったのだった。
宣伝したにも関わらず、まったく話題になってなさそうだけど、どうなることやら……。
不安を抱えながら、今日もテキストを片付け倉庫へと向かう。
使えないものは捨て終えたので、最近は掃除がメインだ。ただ汚れがあちこちにこびりついており、なかなか一筋縄ではいかない。
でも、目に見えて綺麗になっていくので、慣れれば掃除もそこまで苦痛ではなくなった。
疲れて休憩していると、私はふとレジスのことを思い出した。
――昨日はサロンの最終準備をずっとしていたから、倉庫にこなかったのよね。……この前と同じ時間帯だし、今日もいるのかしら。
そーっと扉から外を覗いてみる。すると、前回と同じ場所にレジスの姿を発見した。
でも、今日はどこか様子がおかしい。落ち着きがなく、やたらきょろきょろしている。
もしかして、猫を捜してる……?
その後もずっと陰からレジスの様子を見守っていたが、ずっとなにかを捜している。立って動いてはまた戻って……その繰り返しだ。
私はだんだんいたたまれない気持ちになり、無意識にため息をついていた。だってレジスが捜している猫は、私が動かなければ絶対に見つかることはないんだもの。
――仕方ない。レジスの癒しのために、また一肌脱ぐしかないわ。
倉庫で獣化し、私は白猫の姿でレジスのもとへ駆け寄った。こんなに連続で獣化するなんて初めてだ。
「あっ……!」
レジスは私を発見するなり、喜びの声を上げた。
キリッとした顔つきは一瞬で綻び柔らかくなる。レジスのこんな顔が見られるのは、学園中で私くらいだろう。なんだかちょっと優越感だ。
「お前は飼い主はいるのか? でも、首輪をしていないな……野良猫か?」
「にゃー」
「そうか。野良猫なんだな」
つ、通じた。
「俺、お前の名前を考えてきたんだ」
屈んで私の頭を撫でながら、レジスは照れくさそうに言う。野良猫に名前を考えてくるとは、よっぽどこの前のことがうれしかったのだろうか。
どんな名前を考えたのか、まったく想像できない。私はうきうきしながらレジスの言葉を待った。
「シピ、っていうのはどうだ? お前、ひとを翻弄しそうだから。小悪魔って意味でシピ」
レジスの口から小悪魔なんて言葉が聞けるとは夢にも思わなかった。それにシピって……響きもいいし、なかなかかわいい名前じゃない。
「にゃっ!」
気に入った! というように、私はレジスの膝にすりすりと頬を寄せる。レジスはほっとした顔を見せて、今度は私の背中を毛並みを確かめるように撫で続けた。
モフモフに癒されるレジスを見て、もはや私が癒されている。私はそのまましばらくのあいだ、レジスのあたたかくて大きな手を堪能した。
「いつも昼休みはここにいるから、ここでお前を待ってる。いつでも会いにきてくれ」
「……にゃあ」
「ふっ。いい子だ」
ちゃんと返事をしたことを褒めるように、よしよしと頭を撫でられた。
――そんなことを言われると、期待を裏切れなくなるじゃない。
前回の失敗を学び、私は早めにレジスの前から退散する。レジスは私がこの辺りにいる野良猫と確信したからか、追いかけてくるようなことはせず、かわりに名残惜しそうに手を振ってきた。
教室に戻ると、あんな顔絶対見せないんだろうな。獣化するリスクと比べても、あんなレジスを見るとなんだか得した気分。
私は倉庫に戻ると、レジスと鉢合わせにならないよう警戒しながら、また寮へと戻ったのだった。