モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
その後も数人やって来て、愚痴や相談を聞きながらタロット占いをした。
 もうすぐ二十一時になる。今日はこれで終了かと思い、ぐーっと体を伸ばしていると、サロンの扉が開いた。

「……レジスさ……じゃなくて、レジス!?」

 つい〝様〟をつけそうになったが、この前言われたことを思い出し言い直す。

「来てくれたんですね!」
「……この前フィーナが教えてくれて、気になっていたから」

 レジスはそっぽを向きながら恥ずかしそうに言うと、私の正面に座る。

「嬉しいです。今日はどんなご相談ですか?」
「ああ、とりあえず、フィーナが未だに俺に敬語を使うことが悩みだな」
「うっ、ご、ごめんなさ――ごめん。まだ慣れなくて」
「それでいい。……悪い。フィーナの慌てる様子を見たくて、つい意地悪をしてしまった」
「もう! レジスったら!」

 むすっとした顔で言われたから、本当に怒っているのかと思いすごく焦った。そんな私を見て、レジスは楽しそうにくすくすと笑った。
 今までレジスは人間が嫌いで、学園の生徒と関わる気なんてゼロなんだと思っていたけど、一度仲良くなると心を開きやすいタイプなのかしら。私とレジスが仲良しと言っていい関係なのかは置いといて、レジスからなぜか歩み寄ってくれている自覚はある。
 
「で、本当の相談は?」
「……え? あ、ああ……」

 レジスはなにか考え込むように口をつぐんだ。

「それともなにか愚痴でも言いにきた? 私なんでも聞いてあげるから、レジスも言いたいこと言ってすっきりして帰って!」
「愚痴――べつに、愚痴はないんだが」
「……レジス、なんの用事もなくきたの?」
「い、いや! ちがう。そうだ。相談がある」

 びっくりした。まさか、私に話すことがなにもないのにサロンにきたのかと思った。そんなの、ただ私と世間話をするためにきたようなものだし、レジスはなにも面白くないわよね。
 相談があると聞いて安心し、私はタロットカードを準備しながらレジスの話を聞くことにした。

「実は――最近とても魅力的な出会いがあったんだ。どうしてもその子が頭から離れなくて、困っている」
「えっ!? そ、それって恋の相談!?」

 私の問いかけに、レジスはうんともすんとも言わない。ということは、肯定ととっていいだろうか。
 レジスから恋愛話が出てくるとは驚きだわ。誰かに知られたら、間違いなく学園のビッグニュースになること間違いなしだ。相手が誰かすごく気になるが、レジスはそこまで教えてくれないだろう。アナベルみたいに口を滑らせるなんてヘマもしなそうだ。とにかく、エミリーでないことを祈るしかないわね。エミリー、レジスのことも密かに狙っていたから。
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