モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「……どこで出会ったか聞いてもいい? アルベリクの生徒?」
「学園の裏庭のさらに奥――前、一度フィーナと出くわした場所があるだろ。俺はいつも昼休みをその場所で過ごしているんだが、そこで寝ているときに、突然現れて」
それって、もしかしてもしかしなくても――獣化した私(シピ)のことじゃないか。
私が早とちりして恋愛話と言ったのが悪かったのか、レジスは相手が猫ということは伏せている。さすがに猫の相談をしていると思われるのは恥ずかしいようだ。
私もレジスから自分のことを相談されるとは思っていなくて、タロットカードを持つ手にじんわりと汗をかいてきた。
「へ、へぇー。運命の出会いみたいなやつかしら。それで、なにが気にかかっているの?」
「……近頃、全然会えないんだ。だから、次はいつごろ会えるか占ってほしくて」
はぁ、と小さくため息をつくレジス。
私はぎくりとした。そういえば、最近テキスト課題に追われて倉庫の作業をおろそかにしていたことに気づく。天気が悪い日も続いて、外に出るのが億劫になっていたのよね。
レジスがシピに会いたくて寂しい思いをしていたなんて、全然考えていなかった。あの場所でシピを待っているレジスを想像すると申し訳なさでいっぱになる。……でも、ちょっとかわいいとも思ってしまった。
次会えるのがいつかは正直私次第なのだが、なにもしないのはおかしいので一応占いはしておこう。
「カップの2の正位置。やったわねレジス、すごくいいカードよ」
悪いカードが出たらどうしようと思ったが、レジスにとってはかなりいい占い結果となった。さすが、レジスほどの美男子だと、運までも味方につくといったところか。
「このカードは気持ちが通じ合うことを表すの。相手もレジスのことを意識している可能性が高いわ。それが恋愛感情か友情かはまだわからないけど、好意はもたれてるはず」
出たカードの結果をそのまま話しているだけなのに、相手が仮にも自分とわかっているからか気恥ずかしい。
「そ、そうか。よかった……。じゃあ、近々会えるだろうか?」
「ええ。きっと会えるわ。近いうち必ず」
明日の昼休み、倉庫に行くしかないわね。レジスに言いながら、私は心の中でそう思った。
「ありがとうフィーナ。……すまない。時間が少し過ぎてしまったな」
時計を見ると、二十一時から十五分ほど経過していた。
「全然平気よ。レジスがきてくれて嬉しかった」
「……また来る」
「あ! ちょっと待って!」
扉に手をかけるレジスの背中に向かって声をかけると、レジスは私のほうを振り返った。
「その、この前偶然会った日以来、すごく話しかけてくれるようになったよね? なんでかなーって……」
純粋にずっと疑問だったことを、思い切ってレジスに聞いてみた。
「……俺は噂通り、あまり人と関わるのが得意じゃないし、女は特に苦手だ」
「うん。そう聞いてたから、余計不思議に思っちゃって」
「でも、フィーナは……なんというか、ほかとはちがう」
「えっ?」
そ、それって、いったいどういう意味?
ドキドキしながらレジスの言葉を待っていると、レジスは真顔でこう言った。
「フィーナって、猫みたいだろ?」
「……はい?」
「俺、猫が好きなんだ。だから……まぁ、そういうことだ」
そういうことって、どういうことなのか全然わからないんですけど?
「じゃあ、おやすみ」
レジスはそのままサロンから颯爽と去って行った。私は首を傾げたまま、ひとりサロンに残りレジスの言った意味を考える。
――人は嫌いだけど、私は猫みたいだから平気ってこと?
たしかに間違ってはないけど! 半分猫みたいなものだけど!
あんなにまっすぐな瞳で 〝ほかとはちがう〟なんて言われたら、なにか特別な意味があるのかと勘違いしちゃったじゃない。なのに理由が〝猫みたい〟って……。レジスってもしかして天然?
期待した応えとはちがったことを、少し残念に思っている自分がいた。
「学園の裏庭のさらに奥――前、一度フィーナと出くわした場所があるだろ。俺はいつも昼休みをその場所で過ごしているんだが、そこで寝ているときに、突然現れて」
それって、もしかしてもしかしなくても――獣化した私(シピ)のことじゃないか。
私が早とちりして恋愛話と言ったのが悪かったのか、レジスは相手が猫ということは伏せている。さすがに猫の相談をしていると思われるのは恥ずかしいようだ。
私もレジスから自分のことを相談されるとは思っていなくて、タロットカードを持つ手にじんわりと汗をかいてきた。
「へ、へぇー。運命の出会いみたいなやつかしら。それで、なにが気にかかっているの?」
「……近頃、全然会えないんだ。だから、次はいつごろ会えるか占ってほしくて」
はぁ、と小さくため息をつくレジス。
私はぎくりとした。そういえば、最近テキスト課題に追われて倉庫の作業をおろそかにしていたことに気づく。天気が悪い日も続いて、外に出るのが億劫になっていたのよね。
レジスがシピに会いたくて寂しい思いをしていたなんて、全然考えていなかった。あの場所でシピを待っているレジスを想像すると申し訳なさでいっぱになる。……でも、ちょっとかわいいとも思ってしまった。
次会えるのがいつかは正直私次第なのだが、なにもしないのはおかしいので一応占いはしておこう。
「カップの2の正位置。やったわねレジス、すごくいいカードよ」
悪いカードが出たらどうしようと思ったが、レジスにとってはかなりいい占い結果となった。さすが、レジスほどの美男子だと、運までも味方につくといったところか。
「このカードは気持ちが通じ合うことを表すの。相手もレジスのことを意識している可能性が高いわ。それが恋愛感情か友情かはまだわからないけど、好意はもたれてるはず」
出たカードの結果をそのまま話しているだけなのに、相手が仮にも自分とわかっているからか気恥ずかしい。
「そ、そうか。よかった……。じゃあ、近々会えるだろうか?」
「ええ。きっと会えるわ。近いうち必ず」
明日の昼休み、倉庫に行くしかないわね。レジスに言いながら、私は心の中でそう思った。
「ありがとうフィーナ。……すまない。時間が少し過ぎてしまったな」
時計を見ると、二十一時から十五分ほど経過していた。
「全然平気よ。レジスがきてくれて嬉しかった」
「……また来る」
「あ! ちょっと待って!」
扉に手をかけるレジスの背中に向かって声をかけると、レジスは私のほうを振り返った。
「その、この前偶然会った日以来、すごく話しかけてくれるようになったよね? なんでかなーって……」
純粋にずっと疑問だったことを、思い切ってレジスに聞いてみた。
「……俺は噂通り、あまり人と関わるのが得意じゃないし、女は特に苦手だ」
「うん。そう聞いてたから、余計不思議に思っちゃって」
「でも、フィーナは……なんというか、ほかとはちがう」
「えっ?」
そ、それって、いったいどういう意味?
ドキドキしながらレジスの言葉を待っていると、レジスは真顔でこう言った。
「フィーナって、猫みたいだろ?」
「……はい?」
「俺、猫が好きなんだ。だから……まぁ、そういうことだ」
そういうことって、どういうことなのか全然わからないんですけど?
「じゃあ、おやすみ」
レジスはそのままサロンから颯爽と去って行った。私は首を傾げたまま、ひとりサロンに残りレジスの言った意味を考える。
――人は嫌いだけど、私は猫みたいだから平気ってこと?
たしかに間違ってはないけど! 半分猫みたいなものだけど!
あんなにまっすぐな瞳で 〝ほかとはちがう〟なんて言われたら、なにか特別な意味があるのかと勘違いしちゃったじゃない。なのに理由が〝猫みたい〟って……。レジスってもしかして天然?
期待した応えとはちがったことを、少し残念に思っている自分がいた。