モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「あっ……。すまない。先客がいたんだな」

 訪ねてきたのはレジスだった。マティアスがいることに気づき、レジスはそのまま扉を閉めようとする。

「あ、大丈夫だよレジス! 僕はもう出るところだから」
「……そうか」

 マティアスがレジスにどうぞ、というように席を立つと、レジスはサロンの中へ入ってきた。

「意外だな。君もこういったものに参加するんだね」
「べつに、俺の勝手だろ」

 すれ違いざまに、マティアスがレジスに話しかける。レジスはマティアスと目も合わさずにそう言い返した。

「それはそうだ。僕のイメージの中のレジスはこういったものに興味を示さなそうだったから、驚いただけだよ。でもたしかに、レジスは悩みが尽きなそうだもんな。ほら、最近女子生徒に付きまとわれて困ってるところをよく見るし。モテる男もたいへんだな」
「お前ほどじゃない。余計なお世話だ」

 冷たく言い放つレジスを見て、マティアスは苦笑いをする。

「じゃあ僕は行くよ。フィーナ、今度はシールをもらえるようがんばるね」
「お待ちしております。でも、悩みがないのはいいことですよ」
「はは。今の悩みは、悩みがないことだな。それじゃあ」

 手を振りながらウインクをして、マティアスはサロンから出て行った。
 レジスはむすっとした顔をして、おもしろくなさそうに椅子に座り頬杖をつく。なにか嫌なことでもあったのだろうか。

「レジス、どうかしたの? ご機嫌ななめに見えるけど」
「べつに」
「……あ、さっきマティアス様がレジスが女子生徒に付きまとわれてるとか言ってたけど、それは大丈夫なの?」
「俺にはなんの話かさっぱりだ。誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」
「そ、そう。ならいいけど」

 普段から愛想がいいとはいえないが、今日のレジスはおかしい。いつもサロンにきたときはレジスのほうからいろいろと話してくれるのに、今日はあまり口を開こうとしない。
 私もどうしたらいいかわからず、お互いなにも喋らないまま気まずい空気が流れる。
 
「……フィーナって、マティアスと仲がいいのか?」

 そんな空気を破ったのは、レジスのそのひと言だった。

「え? どうして?」
「楽しそうだったし、あいつと話しているときのフィーナの顔がうれしそうだった」

 レジスの前でマティアスと話してたのなんて、今さっきのほんの少しの時間だけだ。そう言われてみれば、マティアスは憧れのひとだし、アナベルと両想いなこともわかって、私の顔が緩んでいたのかもしれない。
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