モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 〝昼休みを一緒に過ごしてくれないか〟。
 レジスにそう頼まれ、私はいつもレジスがいる芝生の上で、レジスと共に昼休みを過ごすこととなった。何度もここで一緒に過ごしているけど、〝フィーナ〟としては初めてだ。
 昨日の一件があってから、レジスを前にすると緊張しないか不安だったのに、早速ふたりきりになってしまうなんて……。平常心! 平常心よフィーナ!

「レジス、お昼ご飯は食べないの?」

 急にレジスを意識しだしたことを本人に悟られないように、私はいつものようにレジスに話しかける。
「今日はフィーナのおにぎりが売ってない日だったから、特に食べるものがない」
「だめよ! ちゃんと食べないと! 午後のエネルギーが切れちゃうわよ」
「……俺はもともと小食なんだ。でも、寮の食事とフィーナの料理を食べるようになってから、ご飯っていいものだなと思うようになった」

 そういえば、いつもレジスはここでぼーっとしていることが多かった。あまり食に興味がないひとだったのか。なのにどうしてこんなに大きく育ったんだろう。……遺伝かしら?

「ふふ。そんなうれしいこと言われたら、私もマルトさんもますます料理に精が出ちゃうわね」
「逆に、ほかのものを食べる気が起きなくなったのも事実だけどな」
「えっ! それはちょっと……いやかなり問題ね。ここを卒業したときのレジスの食生活が心配になるわ。ちゃんとほかのものも食べないとだめよ」
「フィーナが言うなら、これからは気をつけよう」

 レジスの健康のためにも、おにぎりを作る日を増やそうかと考えていると、隣でレジスが小さな笑い声を漏らした。

「今日はシピに会えないなと思っていたら、フィーナがいたから驚いた」

 そう言って、レジスは私を見ながら微笑む。

「シピって――レジスがいつも私に相談している子のこと?」
「え? ああ。そうだ。昼休みに、気まぐれに現れるんだ」

 まるでシピという名前を私が知っているかのように話すから、一瞬レジスに獣化のことがバレているのかとぎくりとしたけど、レジスの反応的に、ただうっかりそのような言い方をしてしまっただけみたいだ。

「……なんだか申し訳ないわ。好きな子と過ごしてたはずの時間を、私と過ごさせるなんて」

 どちらにせよ自分なのだが、シピのことを話すレジスの表情が優しくて、なぜか謝罪の言葉を口にしてしまう。レジスったら、本当にシピのことお気に入りなのね。……もしかして私、獣化した自分に嫉妬してるのだろうか。そうだとしたら末期だ。昨日レジスの口からはっきりと、シピではなく私自身のことが好きだと聞いたばかりなのに。
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