モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「フィーナは大したことないって言ったが、フィーナが思ってるよりも、その事実は俺にとって特別に感じられた。ありがとう」
「本当にそう思ってる?」
「当たり前だろ。できることなら、これからも俺だけ特別であってほしいくらいだ。フィーナの特製オムライスをほかのやつに食べられるのは、なんだか気分が悪い」
「……検討しておきます」

 〝もちろんレジスだけ特別だよ〟って素直に言えればかわいいのに、私は照れくさくてこんな返事しかできなかった。ちらりと横目でレジスを見ると、レジスもまた私のほうを見ていた。目が合って、私たちはどちらかともなく笑みを浮かべる。
 
「こうやって、誰かと一緒にここで過ごすのも悪くないな」

 ふと、レジスがそんなことを言い出した。

「いつもシピちゃんと過ごしているんでしょう?」
「それはそれ。これはこれだ。フィーナだけが、学園で唯一、俺が一緒にいて落ち着く相手なんだ。なんでって言われたらわからないけど」
「……うーん。私がレジスの好きな子と似てるから、とか?」

 冗談でそう言ってみると、レジスは私をじっと見つめてこう言った。

「そうだな。すごく似てる」

 私の紫色の瞳を見ながら、レジスはそっと私の髪に手を伸ばすと、優しく触れた。

「フィーナにはいつか、俺の好きなひとの正体をちゃんと言わなければならないな」

 するりと撫でるように髪を触られ、レジスの手が離れていく。
 
「それじゃあ、俺はそろそろ戻る」

 時計を見て立ち上がるレジスを見て、私もすぐに立ち上がる。もう昼休み終了ギリギリの時間だ。
 その場で教室へ戻って行くレジスを見送る。レジスは何度も私のほうを振り返ってきた。そのたびに、私は笑顔でレジスに手を振った。

 ――私もいつか、獣化のことをレジスに話さないと。
 さっきのレジスの言葉を聞いて、私はそう思った。でも、騙していたと思われ、レジスに嫌われないだろうか。自業自得とはいえ、そうなってしまうのはつらい。
 悩みながら倉庫へと戻る。最後にもう一度扉が開くか確認しようと思い手をかけてみると……。

「あれ?」

 簡単に扉は開いた。中を見ても、昨日私が片付けてから変わったところは特にない。
 誰かがきて開けたのだろうか? それとも、さっきは偶然開かなかっただけ?

「いったいなんだったの……」

 私のひとりごとだけが倉庫に響く。
 ま、手間が省けてラッキーだったと思おう。そのまま私は、深く考えることなく作業の続きを開始した。
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