モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「ちょっとフィーナ、どういうつもりよ!」

 この私がフィーナを追いかけて問い詰めても、フィーナは私などいないかのように平気で無視をした。これは、フィーナなりの反抗だとすぐにわかった。
 ――そっちがそのつもりなら、痛い目を見せてやるわ。
 のびのびと学園生活を送るフィーナにイライラが収まらない。誰のお陰でこの学園に通えていると思っているのよ。言われたことを守れないなら、フィーナが学園に通う必要なんてない。
 私はフィーナが私を無視して孤立させたということを両親に話した。お父様はすぐに、フィーナの両親に事実確認をしていた。向こうは『フィーナは寮にいるので、学園でのことはわからない』の一点張りだ。
 涙を流す私を見て、お父様は激怒した。結果、フィーナは停学処分となり、学園を後にした。このまま退学となるのか、心を入れ替えてまた私の侍女となるのかは、フィーナ次第ということだ。
 最後に会ったフィーナは、むかつくくらい強気な態度を私に見せていたけど、この先はどうなるかしら。一度こんな素敵な学園に入学してしまえば、そう簡単に退学を受け入れられないはず。今も未練タラタラに決まってる。どうせ最終的には私に泣きついて、許しを請うにちがいないわ。

 腹ただしいフィーナを追いやって、今度こそまた快適な学園ライフが送れると思っていた。でも、私の悲劇は止まることがなかった。
 フィーナがいないせいで、自分でやることが多くて仕方ない。一か月経って、私はフィーナがいなくなった穴の大きさに気づいたのだ。
 しかも、今まで積極的にアピールすることのなかったアナベルが、急にマティアス様と距離を縮めだした。マティアス様も満更でもなさそうな顔をしている。次第に私の誘いより、アナベルの誘いを優先するようになった。
 アナベルとその取り巻きと言われていたふたりは、生徒のあいだであまり評判がよくなかった。アナベルは高飛車だし、とっつきにくいという印象が大きい令嬢だった。でも今は、雰囲気が優しくなったといわれ、多くの女子生徒からも慕われるようになっていた。
 アナベルの変化には、寮で今流行っている『お悩みサロン』が関わっていると聞いた。私は寮生ではないので、寮の話題に疎かったが、聞いてみるとそのサロンの主催者はフィーナだという。
 私は驚きを隠せなかった。まさかフィーナに、自分ひとりでそのようなことをする行動力があると思わなかったからだ。
 フィーナが学園に通っていたときよりも、フィーナの名前を学園で耳にするようになった。
 ――許せない。どうしてフィーナが私よりも注目されるのよ。せっかく停学にしたのに、これじゃあ意味ないじゃない!
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