モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 追い打ちをかけるように、私の耳に新たな噂が届いた。
 その内容は――〝女嫌いのレジスがフィーナと仲良くしている〟ということ。

 私はマティアス様ともうまくいっていないのに、フィーナはこっそりレジスと親交を深めているですって? 
 レジスはフィーナに冷たい態度をとっていた。こんな噂、信憑性に欠けている。
 私は真意を確認するために、レジスに話しかけた。相変わらず、無駄に顔だけは整っているが、話しかけるなというオーラは身に纏っている。でも、今はそんなのお構いなしだ。

「ちょっといいかしら」

 席に座って、頬杖をつきながら窓の外を眺めているレジスに話しかける。
 ちらりと一瞬だけ私を見上げると、レジスはなにも言わずにまた窓の外へと視線をやった。私が話しかけたのにいい度胸だ。この私にこんな冷たい態度をとる男が、フィーナと仲良くしてるなんてありえない。……そう思ったのに。

「フィーナの話をしたいのだけど」
「……フィーナ? フィーナがどうしたんだ?」

 カマをかけるつもりでフィーナの名前を口にした途端、私なんて視界にも入れようとしなかったレジスの態度が豹変した。
 しっかりと私を見上げながら、食いつくように私の話の続きを待っている。
 レジスが興味を示しているのは私じゃなくて……フィーナのことだということがはっきりとわかった瞬間だった。
 ギリギリと唇を噛みしめながら、私はレジスを置いて教室から去った。

 ――むかつく! むかつく! 

 私の頭の中は、怒りという感情で埋め尽くされていた。フィーナが勝手なことをするまでは、なにもかもうまくいっていた。マティアス様との関係も良好だった。女子生徒から憧れの的で、今ごろ学園のマドンナになっていたはずなのに!
 私がこうなったのは、全部フィーナのせいよ。

「絶対許さないんだから……!」

 誰もいない踊り場で、私は壁に思い切り拳を打ち付けた。
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