モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 帰ってすぐに、私は侍女に言ってメレス家のことを徹底的に調べさせた。すると、予想通りの事実がわかった。メレス家の子供が、三割の確率で獣化できる能力を持っているということが。
 ルミエル国では獣化ができる人間はめずらしい。でも、世界でみればそれほどめずらしいことではない。フィーナはそんな特殊能力を、今まで隠して生きてきたようだ。
 まさか白猫になりレジスと距離を縮めていたなんて――これはおもしろい弱みを握ったわ。

 後日、私は倉庫に先回りして中から鍵をかけておいた。
 案の定、遅れてきたフィーナは倉庫が開けられない。フィーナの焦っている声が、中まで聞こえてきた。
 これで獣化できる場所がなくなった。このままレジスに見つかって、獣化のことがバレて嫌われてしまえばいいのに。
 
「フィーナ?」
「レッ、レジス!?」

 外からレジスの声が聞こえた。慌てるフィーナの声に、おもわず笑い声が漏れそうになり、自分の手で口を塞いだ。
「なにしてるんだ? こんなところで。そういえば、前もここでフィーナに会ったよな」

 ふたりの会話を聞いていると、レジスは白猫がフィーナということをやっぱりわかっていないようだ。もっとフィーナのことを怪しむと思ったけど、レジスはあっさりとフィーナの言うことを信じ、しまいにはフィーナと昼休みを一緒に過ごしている。
 扉の隙間からふたりの様子を窺うと、肩を並べて寄り添いながら、とても楽しそうに会話をしていた。いい感じのふたりを見て、私の中にまたどす黒い感情が渦巻いていく。

 その場所は、フィーナがいるべき場所じゃない。私が絶対に、フィーナからなにもかも奪ってやる。
 ……そうだ。いいことを思いついた。
 
「白猫の正体がフィーナとわかったら、レジスはどう思うのかしらね」

 幸せそうに笑い合うふたりを見ながら、私はひとりで呟いた。

 
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