モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「レジスはおもしろがってフィーナに近づいただけよ。いつまでも正体を隠しているあなたのことを、いつも学園で私と一緒に笑っていたわ」
レジスと私は両想いだなんて、大きな勘違いを。
「……レジスはそんなひとじゃないわ」
目の奥がカッと熱くなる。信じたくない一心だけで、私は声を絞り出した。
エミリーはくつくつと喉を鳴らしながら、わたしの耳元に口を寄せた。
「かわいそうなフィーナ」
いつもの可愛らしい声は消え、エミリーから発せられたとは思えない低音が耳元で響く。悪寒のようなものが、私の全身を駆け巡った。
「本当にレジスに好かれてるとでも思った? 寮でのレジスは嘘の姿よ。仕方ないわよね。フィーナは学園でのレジスをまるで知らないんだから。あなたは私とレジスのおもちゃとして遊ばれていただけよ。私とレジスは学園ではとても仲良くさせてもらってるの」
「そんなことない。レジスと過ごした日々は嘘なんかじゃ……そうよ。レジスは私にプレゼントだってくれたのよ」
クリスマスパーティーに参加せず、私と一緒に過ごすことを選んでくれたレジスが、エミリーと共に私を笑い者にするはずがない。
「プレゼントって、水色で、宝石が散りばめられた髪飾りのことかしら?」
「!? どうしてそれを知って――」
「あの髪飾りは、私がレジスに渡したの。庶民のレジスにあんな高い髪飾りが買えるわけないじゃない。冷静に考えたらわかることでしょう?」
エミリーの言うことなんて、なにひとつ信じたくない。信じたくないのに……。
私を支えてくれていた今までのレジスとの思い出に、ぴしりと亀裂の入る音が聞こえた。ひとたび油断してしまえば、あっという間に壊れてしまいそうなほど、大きな亀裂が。
――もし、エミリーの言っていることが全部本当だったとしたら。
ショックで動けなくなる私を満足そうに眺めながら、エミリーは皮肉たっぷりに言う。
「ふふ。フィーナのその絶望した顔が見たかったのよ。辛いわよね? 悲しいわよね? こんな学園から、早く消えてしまいたいわよね。大丈夫よ。あなたの学費は払わないよう、正式にお父様にお願いしておくから。フィーナがいなくなってもレジスには私がいるから、安心してちょうだいね?」
エミリーは私の背後に周り、後ろから両肩にポンっと手を乗せた。
私はその手を振り払うと、勢いよく倉庫から飛び出した。エミリーから逃げるように、裏口へと全力で走り抜ける。
最後まで私を嘲笑うエミリーの声が、耳にこびりついて離れない。
「はあっ……はあっ……」
息が切れて、胸が苦しい。心臓が痛くて、足元がふらふらする。
全力疾走したから? ちがう。それだけじゃない。
――レジスのことを信じられない。レジスを信じられない自分がいることも、信じられない。
誰もいない道で、私はひとりしゃがみ込む。
目の前がぐるぐると渦巻き、次第に真っ黒に染まっていくような感覚に襲われ、怖くなって目を閉じた。
レジスと私は両想いだなんて、大きな勘違いを。
「……レジスはそんなひとじゃないわ」
目の奥がカッと熱くなる。信じたくない一心だけで、私は声を絞り出した。
エミリーはくつくつと喉を鳴らしながら、わたしの耳元に口を寄せた。
「かわいそうなフィーナ」
いつもの可愛らしい声は消え、エミリーから発せられたとは思えない低音が耳元で響く。悪寒のようなものが、私の全身を駆け巡った。
「本当にレジスに好かれてるとでも思った? 寮でのレジスは嘘の姿よ。仕方ないわよね。フィーナは学園でのレジスをまるで知らないんだから。あなたは私とレジスのおもちゃとして遊ばれていただけよ。私とレジスは学園ではとても仲良くさせてもらってるの」
「そんなことない。レジスと過ごした日々は嘘なんかじゃ……そうよ。レジスは私にプレゼントだってくれたのよ」
クリスマスパーティーに参加せず、私と一緒に過ごすことを選んでくれたレジスが、エミリーと共に私を笑い者にするはずがない。
「プレゼントって、水色で、宝石が散りばめられた髪飾りのことかしら?」
「!? どうしてそれを知って――」
「あの髪飾りは、私がレジスに渡したの。庶民のレジスにあんな高い髪飾りが買えるわけないじゃない。冷静に考えたらわかることでしょう?」
エミリーの言うことなんて、なにひとつ信じたくない。信じたくないのに……。
私を支えてくれていた今までのレジスとの思い出に、ぴしりと亀裂の入る音が聞こえた。ひとたび油断してしまえば、あっという間に壊れてしまいそうなほど、大きな亀裂が。
――もし、エミリーの言っていることが全部本当だったとしたら。
ショックで動けなくなる私を満足そうに眺めながら、エミリーは皮肉たっぷりに言う。
「ふふ。フィーナのその絶望した顔が見たかったのよ。辛いわよね? 悲しいわよね? こんな学園から、早く消えてしまいたいわよね。大丈夫よ。あなたの学費は払わないよう、正式にお父様にお願いしておくから。フィーナがいなくなってもレジスには私がいるから、安心してちょうだいね?」
エミリーは私の背後に周り、後ろから両肩にポンっと手を乗せた。
私はその手を振り払うと、勢いよく倉庫から飛び出した。エミリーから逃げるように、裏口へと全力で走り抜ける。
最後まで私を嘲笑うエミリーの声が、耳にこびりついて離れない。
「はあっ……はあっ……」
息が切れて、胸が苦しい。心臓が痛くて、足元がふらふらする。
全力疾走したから? ちがう。それだけじゃない。
――レジスのことを信じられない。レジスを信じられない自分がいることも、信じられない。
誰もいない道で、私はひとりしゃがみ込む。
目の前がぐるぐると渦巻き、次第に真っ黒に染まっていくような感覚に襲われ、怖くなって目を閉じた。