モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
レジス・オリヴェタンのこれまで
「レジス様、本当に付き人をつけなくて大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。心配いらない。それに、〝たったひとりで行け〟と俺に言ったのは父上だ。国王陛下直々の命令に逆らうつもりか?」
「で、ですが心配で……異国の地にたったひとりで行かせるなど! もしレジス様になにかあったら……!」

 王宮の門前で、馬車に乗る寸前の俺を、執事のロレンツォが引きとめていた。幼いころから俺の世話をしてくれたロレンツォは、自分の目の届かない場所へ行く俺が心配で仕方がないらしい。
 もう十六歳になったというのに、いつまで子ども扱いするつもりなのか。俺はため息をつきながら、ロレンツォに言う。

「ただの留学だ。それに、ルミエル国に悪い評判はない。世界中の犯罪数を見ても、トップレベルで平和な国だ」

 なにかあったとしても、今まで培ってきた武術や剣術でどうにかできるだろう。見せる機会が、一度もなければいいのだが。

「そうだとしても不安なのです! 長期休暇の際は、私がルミエル国までお迎えに上がりますから! なにか困ったことがあれば、すぐに私を呼んでください! レジス様のために飛んでいきます!」
「……わかった」

 了承しなければ、いつまで経っても馬車を走らせることができないと悟り、俺は頷いた。
 
「じゃあ、行ってくる」
「お気をつけて! レジス様! ……ああ、王子がいない二年間なんて、寂しくて仕方ない……」

 ひとりで国を離れるのは俺のほうなのに、これじゃあ立場が逆に見える。
 泣きながら大きく手を振るロレンツォに軽く手を振り返し、俺はルミエル王国へと向かった。
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