モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 どうやってフィーナと距離を縮めようかと考えていた矢先に、最悪な出来事が起きた。フィーナがエミリーのせいで、停学になった。
 先生は「家庭の事情」だと言っていたが、エミリーは「学費未納で通えなくなった」とうことや、「学園へ通うための約束ごとをフィーナが破った」などと声を高々にして言いふらしていた。

 ルメルシェ家がメレス家に圧力をかけたということは、一目瞭然だ。
 俺は寮でフィーナを待ち伏せし、事情を聞いた。俺にできることがあれば、なんでもしてやりたかった。身分を隠しているにも関わらず、このときの俺は使える権力はふりかざす気満々だった。

 しかし、フィーナは〝気持ちだけ〟を受け取ることを選んだ。……いろいろ複雑な事情はあったのだろうか。望まれてもいないのに、人さまの事情に安易に首をつっこむわけにはいかない。代わりに、フィーナが停学期間を有効活用するため、寮でサロンを開くことを聞いた。

 学園で会えなくなることは俺にとって絶望的に思えたが、このサロンに通えば寮でフィーナに確実に会える。
 今まで寮での共有スペースにはほとんど顔を出さず、部屋に閉じこもっているだけだったが、フィーナに会えるとなればわけがちがう。
 学園でフィーナがいないことによって開いた穴は、ふらっと気まぐれに現れるシピによって癒されていった。
 寮ではフィーナと、フィーナのお陰で知ることのできた、食堂の美味しいご飯に癒される日々。
 サロンに通うには悩みや相談ごとがないといけない。俺はシピを想い人に見立て、フィーナに毎回相談していた。……これにより、フィーナにほかに好きなひとがいると思われてしまったのは、俺のミスだ。それでも俺は、フィーナとふたりきりで話せるだけで幸せだった。
いずれ、シピの正体は猫だと話せばいい。それを言ったら、フィーナはどんな顔を俺に見せるだろう。驚くだろうか。怒るだろうか。……安心してくれたり、するだろうか。

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