モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
王子様の手をとって
 三月になった。まだ外は肌寒さが残っていて、春の陽気を感じられるのはまだ少し先だろう。

「メレスくん、よくがんばったね!」

 私は久しぶりに、校長室に呼び出されていた。
 ここへきたのは去年の秋、停学処分になったことを伝えられた、あのとき以来のことだった。
 校長は不在のようで、校長室の立派な椅子には理事長が腰かけている。
 テキスト課題はもちろんのこと、倉庫の修復、寮生たちの盛り上げといった特別課題を無事クリアしたことを、理事長が手を叩きながら褒めたたえてくれた。

「寮での評判はよく耳にしていたから知っていたが、倉庫をあそこまで綺麗にしてくれるとは思わなかったよ。君は期待以上の仕事をしてくれたね」
「ありがとうございます。私も最初見たときは、期待以上の汚さで驚きましたよ……」
「はっはっは! それはすまないことをした。君の努力を無駄にしないよう、来年度からさっそくあの倉庫を活用させてもらうよ」

 倉庫の修復を終えたという報告を理事長に伝えると、理事長はすぐに倉庫を見に行ってくれたようだ。あまりに感動したらしく、私は今日、こうして呼び出されたというわけだ。

「えーっと理事長、最後に確認したいのですが……これで私の停学中の学費は……」
「もちろん、約束通り学費は免除だ。こちらでうまくやっておくから、君は心配しなくていい」
「本当ですかっ!? ……はぁ、よかったぁ」

 理事長が言うなら間違いないだろう。私はほっと胸を撫で下ろした。
 最初にこの特別課題を出されたときは、どうなることかと思ったけど、うまくいってよかったわ。これで、私が約束を破ったことにより受けた両親への打撃も、なんとか減らすことができた。

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