モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「あぁっ! 全然進まない!」

 レジスのことを考えると作業が全然はかどらないことに気づき、私は叫びながら髪の毛を掻きむしった。
 ――そうだわ。気分転換に、マルトさんの料理でも食べようっと。
 リフレッシュするには、マルトさんの料理がいちばんだ。時計を見ると、十六時を指していた。この時間なら、みんなはまだ学園にいるはず。私が食堂を独占できる。私は衣服や本を部屋に散らかしたまま、食堂へと向かった。

「マルトさん! オムライスを作ってもらえるかしら!?」
「あらフィーナ! 遅いお昼ご飯だね。すぐ作るから待ってておくれ」 

 厨房にいるマルトさんに声をかけると、マルトさんは快く了承してくれた。
 裏メニューだった〝特製オムライス〟は、あまりの人気から定番メニューの仲間入りを果たした。
 私がサロンを閉めてしまったので、裏メニューとしてオムライスを食べることができなくなったのも理由のひとつだが、マルトさんは、自分がいちばん自信のあったオムライスをより多くのひとに食べてもらえることができて嬉しそうだ。

 私もマルトさんのお陰で料理の腕はかなり磨かれたから、屋敷に戻ったらみんなにオムライスを振舞ってあげようっと。卵とケチャップ、玉ねぎに鶏肉……具材も安く済むし、貧乏なうちの家族にはありがたいメニューだわ。なんなら、メレス家の定番メニューにもなりそう。
 
 ひとり食堂の椅子に座っている私の前に、マルトさんが出来立てのオムライス を置いた。
 空腹なこともあり、手を合わせたあとすぐにオムライスを食べ始める。何度も食べた馴染みの味だけど、毎回初めて食べたときを思い出す。それくらい、マルトさんのオムライスは絶品だ。

「……こうしてると、フィーナに初めてオムライスを出したときのことを思い出すねぇ。あのときも、誰もいない食堂でこうやって美味しそうにオムライスを食べるフィーナを見て、元気をもらったもの」

 マルトさんに言われ、今のシチュエーションが初めてこのオムライスを食べたときと全く同じなことに気づく。
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