モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「はあ、マルトのオムライスは冷めても美味しいわっ!」

 アナベルは私が残したオムライスをかきこむと、満足げにそう言って、私たちの後を追いかけてきた。

 ――バタン。

 サロンの扉が閉められる。中はまだ片付けが終わっておらず、サロンを開いていたころのまま残っていた。
 私はいつもと逆の席に座らされ、私の定位置だった席には、アナベルが脚を組んで座っている。カロルとリュシーはというと、アナベルの少し後ろで仁王立ち状態だ。

 三人分の圧力が、一気に私にのしかかる。どうして私がここに座らせる流れになったのか、まだ理解ができない。

「あなたはいつもここで、私たちの悩みを聞いてくれたわよね」

 おもむろに、アナベルがぽつりと言った。

「今度は、私たちがフィーナの悩みを聞いてあげる番よ」

 アナベルは恥じらいながら、ゆっくりと私の両手を握った。

「私たちはフィーナみたいに占いとかはできないけど、話を聞いてあげることはできるわ。あなた、ここ最近ずっと様子が変だったでしょう。部屋に閉じこもってばかりだし。……これでもずっと、心配していたのよ」
「……アナベル様」
「だから、今日限定で私があなたの代わりに開いてあげるわ! 〝アナベルのお悩み解決サロン〟をね!」

 アナベルの手からあたたかなぬくもりが伝わってきて、目の奥がじんわりと熱くなってくる。

「……どうして、私のためにそこまで」

 私なんて、ただのモブキャラなのに。本来、私はアナベルと敵同士になる運命だったのに。
 どうして目の前の悪役令嬢は、私にここまで優しくしてくれるのか。

 それは――私が思っていたより、簡単なことだった。

「決まってるじゃない。フィーナは私の友達だからよ」
「――!」

 ぎゅっと手を強く握られる。
 驚く私を見て、アナベルは微笑んだ。

「わ、私……!」

 友達と言われたことがうれしかったのか、アナベルたちの優しさに胸打たれたからか、理由は様々だ。
 私はたかが外れたように、込み上げてくる涙を止められなくなっていた。
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