モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 ――そうか。私、ひとりで悩まなくてよかったんだ。

 アナベルたちは、私が泣き止むまでずっと待っていてくれた。落ち着きを取り戻すと、私は思い切って、三人に今までのことをすべて話した。……転生者だということは、さすがに伏せておいたけど。

 私がアルベリクに入学した理由。
 エミリーとの関係。獣化の話。
 停学と退学の理由。
 そして――レジスとのこれまでと、レジスへの気持ち。

「フィーナの事情は大体わかったわ。――で? まさかフィーナは、これからもレジスよりエミリーの話を信じていくつもりなの?」

 話を聞き終わったアナベルは、射るような眼差しでそう言った。

「私だって信じたくなかったけど、実際レジスは私の獣化のことを知っていたんだもの。……私は学園でのレジスを知らない。エミリーとレジスが裏で仲良くしていたって、おかしな話じゃ――」
「おかしな話よ! あのふたりが仲良くしてるですって!? ありえないわ!」

 アナベルは机を叩き、興奮気味に叫んだ。後ろにいるカロルとリュシーも、うんうんと深く頷いている。

「エミリーが急にレジスを追いかけ回すようになったのは事実よ。でも、レジスはまったく相手にしてなかったわ。見てるこっちが清々しいくらいにね」
「えっ……。そうなんですか?」

 じゃあレジスがエミリーと一緒に、裏で笑っていたっていうのは……?

「最近のエミリーはレジスを追いかけるのをやめたようだし、フィーナのことでレジスともめたんじゃないかしら」
「私のことで?」
「フィーナが勘違いするように、わざとエミリーが仕向けたってこと。要するに、レジスも立派なエミリーの被害者よ。獣化のことは……ふたりがすれ違うように、エミリーがなにか根回ししてた可能性が高いわね」

 レジスも、エミリーの被害者だった? 私はエミリーにまんまと騙されていたというの?
 ――だとしたら、私はレジスにひどい仕打ちをしてしまった。

「……そうだ。ついでに学園でのレジスのこと教えてあげるわ。レジスったら、学園にいるときはびっくりするくらいつまらない人間よ! 笑わない、しゃべらない、愛想もない。むかつくほど綺麗な顔立ちをしておきながら、表情筋をぴくりとも動かさないんだから! 仮面でも張り付けてんのかと思うくらいよ!」

 たしかに、私が学園で見てたレジスのイメージもそんな感じだった。でも今は、そんなレジスの姿が想像できない。

「それが寮でフィーナを見つけた瞬間、笑うし、しゃべるし、愛想はフィーナ限定で振り撒いてるし。別人かと思うくらい。おにぎりを買い占めるなんて奇行に走ったときは、私も大爆笑しちゃったわ。誰がどう見てもレジスはフィーナ一筋だったのに、まさか本人がそれに気づかずに、挙句エミリーなんかの言うことを信じちゃうなんて……。レジスに同情するわ」
「ご、ごめんなさい……」

 謝ると、「それはレジスに言いなさい」とさらに怒られてしまった。
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