秘密事項:同僚と勢いで結婚した
今までだって何度も何度も一緒にご飯に出かけたことはあった。
友達として。同期として。
誘われたら断る理由なんてなかったし、元彼は自由奔放主義な感じで束縛もされなかった。
でも、なんだか今日は擽ったい気持ちでレストランにいる。
普段あまり着ない服を選んだ。肩から手首までレースでできた黒色のワンピース。丈はミディアム丈で、男受けが良いと評判のものだった。ちなみに親と一緒に買い物に出掛けた時に、『似合うから千智くんの前で着なさい』と半ば強引に買わされたものなのだが…。
(………可愛いの一言くらい欲しい…)
勇気を出して着たのは私の都合だけど、そんなことを思う。
「葉山、何食べる?」
「ん〜、どれも美味しそうで困る…」
メニューに並ぶ美味しそうな料理。連れてこられたのはイタリアンレストラン。アヒージョが看板メニューらしい。
(アヒージョとワイン……絶対に合う…。美味しそう…。)
店内に入ると、間接照明で照らされた落ち着いた雰囲気と同時に目に飛び込んできたのは立派な石窯だった。
石窯で丹精込めて焼き上げるピザは絶品と評判のお店ゆえ、ピザも頼みたい。
(ピザは…穂高くんと半分こしたいな。)
なんて考えながらメニューを眺めていると、
「アヒージョとワインとピザ…かな。ピザはどれにする?」
「っ…私の心読んだ?」
見透かしたように穂高くんは言う。
思っていたことが全て口に出ていただろうか。私が頼みたいと思っているものを簡単に言い当てる彼に驚き、『どうして?』という表情で見つめた。