秘密事項:同僚と勢いで結婚した



モニターの前でひたすらキーボードを叩くデスクワークを終え、突入した午後。
ようやく経理部の方へと顔が出せる時間帯。


(髪下ろしてる…)


いつも髪の毛むすんでるのに今日は下ろしているところを見ると、きっと気づいたんだろうな。

家に帰ったら謝ろう…。

デスクに座ってキーボードを打つ葉山。変に話しかけて邪魔をしたくない。


「……はぁ…」


経理部を後にして、一人トボトボと廊下を歩くとため息が漏れた。

廊下まで冷房の冷気が漂う。嘲笑われてるかのような冷たさに、一人苦笑いを浮かべたくなった時だった。


「………経理部に顔出すなら声かけてくれてもいいのに」

「っ…葉山…」


後を追ってきてくれたのだろうか。振り返れば、頬を膨らませて睨みつけてくる葉山の姿があった。


「…今忙しい?」

「特に。」

「……じゃあ、こっちきて」

「?」


俺の手首を掴み、ズンズンと周囲に人が居ないか確認しながら進んでいく。

数メートル先まで歩くと、資料室の扉を開けて中に入った。


「……誰もいない。ラッキー…」


2人きり。

それだけで胸が躍る俺はどうしようもない人間だと思う。


「……穂高くん、これ、なに?」

「………」


ですよね。

その内容の話ですよね。


葉山はキスマークを隠す絆創膏を指差して問い詰める。
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