秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「よぉ穂高久しぶり!」
始業前の、まだゆったりできる時間帯。
同期の橋本くんに廊下で会った。
「どうだった? アメリカは。グラマラスな女性多かったろ?」
「仕事が忙しくて周り見てる暇なかった」
「そこは葉山の前なんだから『葉山しか眼中にありません』って言うところだろ?」
苦笑いを浮かべて2人の(特に橋本くんが)楽しそうなやり取りを見ていた。
確かにアメリカの女性ってグラマラスな人が多い。
それに比べて私は中肉中背なわけですが…。
「てか、帰ってきて早々葉山口説いてんの?」
「朝から大胆に責めた方が効果的かなぁなんて思って」
「葉山も大変だな。でも満更でも無さそうじゃん? 穂高がいない間、元気なさそうだったし!」
何を余計なことを!
寂しかった。2週間、大切な夫が居ないのは大打撃だった。
何気ない顔をして仕事をしていたつもりだったんだけどな。
「……橋本くんって結構鋭いよね。……そんなに顔に出てたかな? 私。」
それは自然と、口を突いて出てしまった言葉だった。
「……わっ!」
ハッとした時、橋本くんはキョトンとした表情を浮かべていて、穂高くんは嬉しそうな表情で私を見ていた。