秘密事項:同僚と勢いで結婚した
キスの裏側
千智side
「穂高くん、結婚しよ?」
唐突なプロポーズに度肝を抜かれたことは言うまでもない。
(かなり酔ってるな…)
『浮気された。別れた。浴びるほどお酒飲みたい気分だから付き合って』という内容の電話を受けて今に至る。
「穂高くん、先輩後輩からモテて選り取り見取りなのに彼女できないよね〜」
「余計なお世話。」
『誰かさんに片想いしているせいでいつまで経っても相手できません』と言ってやりたかった。でもそれを伝えたところで微妙な雰囲気になるのも嫌だし、婚約者がいる相手をずっと想ってたなんて知られるのも嫌だった。
ビールを勢いよく飲んで、眼がとろんと虚になってる。そこまで弱くないのは何度も一緒に飲んでるから知ってるし、自分に対して全く警戒心がないから無防備で居ることも全部把握してる。
(……そんなに俺、男として意識されてないのかよ…)
少しイラッとした。
でもこの怒りを葉山にぶつけるのはお門違いだ。
ずっと誰よりもそばで仲良くしてて、たまにされる彼氏の話を何気ない顔で聞いて、凹んで。
自分の可愛さに気づいてないから変に言い寄ってくる男を蔑ろにするのも下手。
いつも会社の飲み会で、彼氏ヅラして俺が必ず隣に座る理由も、きっと葉山は気づいてない。
本当に、微塵も気づいていない。