秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「………」
必死になって告白の返事を聞こうとしている自分がおかしく感じ、私は姿勢を正した。
(ご飯食べに行こう)
社食に行って食事して。その後にもう一度、穂高くんのもとに行けばいい。
そう思い、一歩を踏み出そうとしたが、ちょうど良いタイミングで聞こえてきた穂高くんの言葉で私の足は止まる。
「……気持ちは嬉しいけど、俺、好きな人いるから」
設定を貫こうとしているんだろう。
穂高くんは真面目で、一つ決めたことを最後まで貫き通す性格だから。
そう私が思っていると、穂高くんはさらに言葉を続ける。
「……ずっと前から好きだったんだけど、相手には婚約者がいて…。諦めようって何度も思ったのに破局したって聞くと抑えられなくて…」
(………え…?)
『ずっと前から好きだった』という穂高くんの言葉が何度も反芻する。
きっと設定の追加だ。
片想いに『実は昔から好きだった』という内容が加えられただけ…。
変に早鐘を打つ鼓動を抑えようと深く呼吸し、そんなことを考えた。