秘密事項:同僚と勢いで結婚した
千智side
「……穂高さんの優しいところ好きです。」
どうやって断ろう。
そればかりを考えている。
最近は自分が提案した設定のおかげで自由気ままに葉山との距離を縮められているし、告白される機会も減っていた。
ここに来て、IT部の後輩、白石さんから久々に告白されている。
お昼休み前だというのに。
『早めに断ってご飯食べたい』と思っているあたり、勇気を出して告ってくれているIT部の白石さんにかなり失礼だろう。
でも、少しも心が揺るがないくらいに葉山が大好きな事実は変わらなくて。
気づけば試行錯誤していたのが馬鹿らしく思えるほどに自然と断りの言葉が出ていた。
「……気持ちは嬉しいけど、俺、好きな人いるから」
設定を守りたいとか、夫婦になったからとか、そういうのは頭になかった。
本気で好きな人がいる。
ただそれだけで次々と口から言葉が溢れるのだから不思議だ。
「……ずっと前から好きだったんだけど、相手には婚約者がいて…。諦めようって何度も思ったのに破局したって聞くと抑えられなくて…」
「………葉山さんのことですか…?」
「最近社内で有名でしょ? 俺が口説いてるって」
「……はい…」
悲しい顔をさせてしまうことは申し訳なく思ってる。
「だから、ごめん。葉山のことが好きだから付き合えない。」
「いえ! 薄々勘づいてはいました! ……穂高さん、飲み会では必ず葉山さんと隣同士で座ってたし…それに…」
「……」
「葉山さんを見る目が凄く優しいんです」
「………観察されてて恥ずかしいな」