秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「……なぁ、葉山。」
本当に『友人かつ仕事仲間』だと思っていたから。
「……さっきのやつ……いいよ。籍、いつ入れる?」
だからこそ、ノリで言ったプロポーズの言葉が承諾されてしまうだなんて思ってもみなかった。
「…………ん?」
酔いすぎて聞こえた幻聴だろうか。
でも目の前にいる穂高くんの表情は真剣そのもので、交わらせた視線を逸らすことは不可能だった。
「え、ほんとに?」
「お互いアラサーだし。親は結婚しろって煩いし。」
「………」
「……俺と結婚すれば元カレのこと忘れられるかもよ。」
「でっでも…!なんかそれって穂高くんを利用してるみたいで…」
(私、最低じゃない?)
利用して、結婚したい欲があるってだけで同期と…って。アリなの?どうなの?
頭の中で葛藤が起きる。
元カレの顔が脳裏を過ぎるのに、目の前にいる穂高くんの表情が目に焼きついて。
「葉山はどうしたい?」
忙しない脳内で深く考えずにパニックになって出した答えは、お酒のせいにするにはとても軽かった。
「………いいよ。結婚しよ」