秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「葉山、顔見せて?」
半ば強引に顔を合わせようと、俺は葉山の顎に触れて優しくクイッと上を向かせた。
「っ……なんでそんな顔してんの…?」
動揺するに決まってる。
目に映ったのは、口を硬く結びながら伏し目がちに頬を真っ赤にさせている葉山の表情。
ふるふると震えていて、可愛くて…。
(……キスしたい…)
熱い欲求が募った。
それと同時に自分の顔が段々と熱くなっていき、何処までも格好つけたかった俺は葉山の顔に触れていた手を離した。
「……ずっと前からって何…? もしかして本気で穂高くんは…わ、私の…こと……」
か細い声で葉山は言う。
良い傾向だと思った。
「………今日、一緒に帰ろうよ」
「っ……私、多分残業で…結構遅くなると思う」
唐突な誘いに困惑したように辿々しく葉山は返答する。
「俺も遅くなるから大丈夫。午後から出張だし。」
「っ…忙しいのに引き止めてごめん」
「いや大丈夫だよ。まだ時間に余裕あるから。」
俺はかなり性悪だと思う。
「葉山が思ってるほど、俺、優しくないよ。」
「え…?」
「……もっと俺のことで悩んだり困ったりしてほしい。」
「……俺のことで頭の中いっぱいにして?」
意地悪したくなる理由を、いちいち反応が可愛い奥さんのせいにした。