秘密事項:同僚と勢いで結婚した
契約

李side



これは契約結婚だ。

締結した契約は5つ。

『一緒に住む』
『家事はお互いがする』
『高い買い物をするときは要相談』


そして4つ目。


『会社にこの結婚は内緒にすること』


この4つ目の契約をしたのには穂高くんなりの理由がある。



「会社では俺の片想いって設定で」

「えっ…」


つい先日のことである。籍を入れて数日後、一緒に住み始めての会話。


「結婚を隠すって無理じゃ…。住所変更届だって提出しなきゃだし…」

「人事部長と総務の人には知られるけど、大っぴらに自分から言うのは禁止。」

「なんで?」

「…………だって葉山の乗り換えが早いとか思われたら嫌じゃん? 葉山が悪く言われるの絶対に嫌だ」


変なところで意地っ張り。別に乗り換えが早いとか言われるのは問題ないのに。


「葉山、せっかく社内で真面目で頑張り屋って印象持たれてるのに変な偏見とか持たれて欲しくないし。前の彼氏との婚約の話、普通に周りも知ってる。だから破局になったことだけ伝えて、あとは俺が口説いてるってだけの設定で!」

「………でも知ってる人からバラされたら…」

「俺がなんとかする。頼み込む。総務部も人事部長も仲良いし多分大丈夫」

「う、うん…?」


納得がいっていない表情を私がしていることは間違いない。私は変な偏見を持たれたところで、努力と実績でそれを覆せば良いと思っているだけなのだが…。

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