秘密事項:同僚と勢いで結婚した
帰省1日目の夜
千智side
「わ!千智さん!!相変わらず格好いいー!」
「こら、柚。私の…おっ夫を口説くのなし!」
葉山と顔がそっくりな妹の柚ちゃん。祭りが終わって、帰っている最中に遭遇した。
葉山は必死に設定通りのおしどり夫婦を演じていて、少しだけ笑いそうになる。無理しているのがバレバレで可愛らしくも思えた。
「あれ…でも…」
「?」
今日と明日泊まることを伝えて丁寧に挨拶をしようと思ったところで、柚ちゃんの驚いた表情が視界に映る。
「その浴衣って…峻さんの…」
(……しゅん…って葉山の元カレの…)
なんとなく、その一言で俺は察した。
あぁ、なるほど。
通りで。
おかしいと思ったんだ。
2人姉妹の葉山の家に、若い男の人が着るような浴衣がある時点で薄々勘付いていた。
お父さんが若い頃に着ていたものかもしれない、なんて思ったけど、それにしては新しい。
「柚…それは…」
葉山の表情から確信に変わった。
「えっと…その…」
「柚ちゃん、今日と明日の2泊お世話になります。よろしく」
「あっはい!母から聞いてます!お姉ちゃんがいつもお世話になってて…!」
「柚、声大きい。近所迷惑になるよ」
「あ、ごめん…」
話を変えるように挨拶をすると、ニッコリ笑って返す柚ちゃん。
祭りの雰囲気を引きずっているような元気な声で返答してくれた妹を叱る葉山の姉の顔つきに新鮮味を感じた。
笑った顔は姉妹似ていて、仲の良さが声音や態度から伝わってくる。
(久々に俺も弟に連絡しようかな)
なんて思えるくらいに、葉山と柚ちゃんのやり取りに羨ましさを覚えた。