秘密事項:同僚と勢いで結婚した
家に帰ると、賑やかな雰囲気で出迎えてくださる葉山の両親。この人たちから葉山が生まれたと考えると深く納得がいく。温かい人柄を持ったご両親だ。
長旅のあと、祭りに出かけて…。
今日は割とハードな1日だったと思う。
(……充実してるな)
そう感想を抱き、一人になった部屋で浴衣の帯を緩めようとした時だった。
「李、お風呂沸いてるよ〜。千智くんと入りなさいな〜」
「え!?」
廊下から聞こえて来る会話に、ドキッと胸が大きく高鳴る。
いやいやいや!
確かに夫婦だし、今日一日中『おしどり感』を漂わせて過ごしてきたけれども。
何処までもマイペースかつゆったりした話し方の葉山のお母さんに、突っ込みを入れたくなった。
「千智とお風呂はちょっと…」
「結婚してるのに?」
「してるけど…!」
「峻くんとは入ってたじゃない?」
「っ…母さん!それ禁句!」
へぇ〜。ふ〜ん。
なんでこんな遠回しに傷つかなきゃいけないんだ。
誰に見られるわけでもない苦笑いが溢れる。