秘密事項:同僚と勢いで結婚した
(……穂高くんらしいかも)
ある意味彼の良いところだと言えるのかもしれない。偏見とか、そういうのが嫌いな人だということは長い付き合いから知っている。
『自分が片想いしている設定』って割と恥ずかしいだろうし、周りの目を気にしない人にしかできない設定だ。
「……他人の他人からの目は気にするくせに…」
「ん?何か言った?」
「べつに〜」
これが『穂高 千智』という人間だ。
そして彼が、私の夫になったわけだけど…。
「……夫婦らしいことはしないよね?」
その質問をして、数秒の沈黙が訪れた。
それから私はハッとする。
「っ……ごめっ…! 変なこと言った…!」
「……もう一つ契約しよ」
「…うん…??」
この契約結婚の契約の数は5つ。
最後5つ目は、
「葉山が俺のこと好きになったら、『そういうこと』しよっか。」
と、いうもの。
(私が、穂高くんのことを…?)
想いのない、交際0日契約結婚。
勢いでしたプロポーズが実ってしまい、今に至る。
「……『そういうこと』って…」
「ふっ…わかってて訊いてるだろ。顔真っ赤。」
「っ…」
私の夫になった男の人。
一番仲が良いと思っていた男友達に恋をする日は来るのかどうか未知すぎて想像できないけれど…
私を見て笑う彼を、可愛いなんて思ってしまった。