秘密事項:同僚と勢いで結婚した
切なくなる。
心臓の動悸が速まって、胸を射抜かれた感覚。
そして耐えられなくなった私は彼に言う。
「……穂高くんの…ばか……。」
「っ! え……まさか、ずっと…起きてっ…」
目を大きくして驚き、私から離れた穂高くんは面白い表情をしていた。
私も他人のことが言えないような表情をしているんだろう。
「……穂高くんが思ってる以上に私…単純だよ…」
「…………」
穂高くんの布団の中に手を伸ばして、穂高くんの大きくて温かい手を握った。震えないように指先に力を込めるけれど、その努力は無意味に終わる。
「……」
友達でいたい、とか。
親友になりたい、とか。
居心地の良さにずっと甘んじていたんだ。
「……無意識に、また浮気されたらどうしようって…不安になってたのかもね」
穂高くんは、そんなことをする人じゃないのに。
「……トラウマ?」
「そりゃぁ信頼してた人に裏切られましたから…」
あはは、と薄ら笑いを浮かべると、その反応を見た穂高くんは私の手をギュッと握り返して私の布団の方へと身を動かした。
「………俺、しつこいくらいに一途だよ?」
「ふっ…アピールタイム?」
「うん」
素直で真っ直ぐな愛情表現に照れてしまう。
「……私も、好きになったらとことんしつこいタイプだよ…?」
「むしろそれ…大歓迎なんだけど。」
「あははっ」
その後、電気を消して真っ暗な中。
私と穂高くんは手を繋ぎながら、たわいもない話を始めた。
どっちが先にとか無く、2人同時に眠りにつく。
そんな帰省1日目だった。