秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「……一人で立てないなら帰った方がいい。」
「でも…」
「………なんなら一緒に俺も帰るよ。駅までおんぶすればタクシー捕まえられるだろうから」
「2人で抜けるの変じゃない…?」
そうも言ってられなさそうだった。
明らかに苦しそうだし、顔はずっと顰(しか)めてる。息も上がっていて、脚に力が入ってない。
「……他人よりも自分を大切にしなよ。」
軽く説教気味に言う。
そうしなければ葉山は言うことを聞かないと、この頃から自分は気づいていたんだと思う。
意外と頑固な葉山を説得するのに割と時間がかかったけれど、最終的に『挨拶だけはしっかりして、それから帰る』ということになり、適当な理由をつけて2人で駅まで行くことが決定した。
本当に強い人だと思った。
自分の体調の悪さを絶対にバレないように隠し通す。
もし、自分が同じ立場に陥ったとしたら(生物学的に絶対にあり得ないもしも話だけど)、きっとここまで頑張らずに早々に帰ってる。
「……葉山さんって強くてかっこいいな」
「それって褒めてる?」
なんて会話をして駅で別れた。
けど、それは俺の偏った見方でしかなかった。