秘密事項:同僚と勢いで結婚した
(……親友には言いたいのに…)
話したい、が、『結婚する前に何故相談してくれなかったのか』と、のっちゃんは悲しむだろうか。
今まで何もかも相談していた相手に、今更全てが事後報告の内容を話すことを、無意識のうちに躊躇ってしまう。
(考えすぎ…? のっちゃんなら受け入れてくれるはず…。でも……)
プロポーズがノリで、それが実って、籍を入れて…。
心配しないわけがない。
今すぐ離婚しろと、言われてしまうかも知れない。
答え方を考えあぐね、私は薄ら笑いを浮かべた。
そんな時。
「他の男の紹介とかしなくていいよ」
背後から聞き馴染みのある声が降ってくる。それと同時に、頭に軽い重みと温かさを感じた。
「ほだ…か…くん?」
振り返ろうと食器や箸を置いたけれど、ポンポンと頭を優しく撫でられて私の行動は静止する。
「俺、今必死になって葉山のこと口説いてる最中だから相田は見守ってて」
どんな顔で穂高くんは言ってるんだろう。
胸のあたり、喉の奥付近がキュッと甘く締まった。
「そっか。ファイトー穂高〜。穂高なら安心して任せられる」
「ありがとう」
お礼を伝えると、頭に感じていた重みは消えて、穂高くんはすぐに同じ営業部の人のところへと去って行ってしまった。
「…穂高に言い寄られてるとは予想外。」
「っ……つい最近のことで…!」
「元カレと別れてから?」
「うん。」
穂高くんは私のこと好きじゃない。
好きじゃないのに、勘違いしそうになる。
感じた手の温もりと重みを名残惜しく感じる私はきっと単純な人間だ。