秘密事項:同僚と勢いで結婚した
思えば変な関係だ。
結婚してて、夫婦なのに。
とっくに私は『穂高 李』なのに。
私は、好きという気持ちひとつ満足に彼に伝えられない妻で…。
穂高くんのキス、そして想いも受け取るばかりで、私からは何も。
《ちゅっ…ちゅっ……》
何も…。
「……………っ…葉山…泣いてる?」
「っ……泣いて…ない…」
お酒を飲み過ぎたんだ。
だからこんなにも簡単に涙が出るんだろう。
「ごめん。……やり過ぎた…。えっと…」
穂高くんは私から離れて困った様子で顔を覗き込んできた。
「……泣かせてごめん…」
(……….だから…謝らないでよ…)
ウブなフリをしたいわけじゃない。ましてや純情でもないし、未経験というわけでもない。
《グイッ》
私は穂高くんの襟元を掴み、強引に唇を彼の唇に押し付けた。
「んっ…はや、ま……っ!?」
彼の口が開いたタイミングを逃さずに舌を入れる。それから特に何も考えず、ただただ夢中になって動かしてみた。アルコールの芳香を感じながら彼の舌を甘く吸うと、その動きに応えるように彼は絡め合わせてくる。
伝われ。
「……………好き……」
唇を離すと、どちらのものかもわからない液体が銀色の糸となって伸びた。