秘密事項:同僚と勢いで結婚した
大切な日
李side
8月19日は私の誕生日だ。
歳をとりたくない私にとって、大して嬉しくもない誕生日。
1年365日のうちの1日。
「暑い〜」
その日は蒸し暑い日で、いつもと変わらずに出勤して仕事を捌いていた。
本当に、ありふれた、ありきたりな平日。
だと思っていたかったんだけど…。
「……葉山、今日の夜空いてる?」
私の夫は、きっと『ありきたりな一日』で終わらせる気はないんだろう。
「っ…空いてるけど…」
「そっか。じゃあ、一緒に帰ろ。仕事終わったら経理部に迎えに行くからよろしく」
何も人がたくさんいるところで誘わなくてもいいんじゃなかろうか…?
ニヤニヤしている上司、同期、後輩。
顔から火が噴きそうなくらいに恥ずかしい想いをしてる私を見て楽しんでる顔すら浮かべていた。
(………やっぱり意地悪…)
これは彼なりの独占欲の表れらしい。
『夜、俺が占領するから誰もこいつを誘わないでくださいね』とでも言いたげな表情だ。
「………わかった。待ってる」
心の中でSっ気のある彼に悪態を吐きながらも、夜に密かに胸躍らせていること。
絶対に彼にバレてたまるか。