秘密事項:同僚と勢いで結婚した

千智side



昨夜、『誕生日前日なんだし一緒に寝よう』と誘ったところ、明日仕事だからダメ!と突っぱねられた。

朝、祝おうと、起きて早々リビングに行けば、『先に行きます』と素っ気ないメモ帳が残してあった。

だから夫として情けないことに、未だに葉山に『おめでとう』と言えていない…。


どうやら、葉山にとって誕生日は特別な日ではないらしい。


いや、違う。


ヤケに『特別な日とは思ってませんよ』感が凄いし、それを誇張してる気がする。


(……『何気ない一日と変わらない』って主張すればするだけ『思入れ深い一日です』って言っているようなもんじゃね?)


面白く思わなかった俺は、わざわざ経理部に出向いた。


「一緒に帰ろ。仕事終わったら経理部に迎えに行くからよろしく」


今日やっと会えて舞い上がってる自分に呆れながら、逃すまいと近くにいる同僚に聞こえる声の大きさで妻に釘を刺す。


おめでとう、はまだ言いたくない。


祝いの言葉は2人っきりでプレゼントを渡すときに伝えたい。


……その時、笑顔になってくれたら良いな、と思う。



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