秘密事項:同僚と勢いで結婚した
千智side
「……李…?」
「……峻…」
まじか。
長年、葉山のことを想い続けてきたけど、しっかりと『峻』という人間を見たのは初めてだった。
黒縁メガネが印象的。真面目そうで頭が良さそう、と偏見を持った。
「ごめん。…俺の顔なんて見たくないよな」
「………」
葉山に向けて言う。
気まずそうに葉山は俺の顔を一目すると、真剣な表情に切り替えて峻(『さん』付けする義理もなく呼び捨て)を見た。
「そのっ……俺、後悔してて…今でも李のことが…」
このパターンはよろしくない気がする。
『よりを戻したい』
『二度と浮気しない』
『大切にする』
そんなことを言いそうな顔付きと雰囲気に、俺はドギマギしていた。
「本当に今更…しかもプロポーズして一年経つ日に言うのも変だけど………」
その言葉を聞いて知る。
一年前の今日、葉山はプロポーズされていたのか。
(……だから今日…ずっと葉山は…)
誕生日なんて気にしてないみたいな表情を浮かべていたんだろうか。
「李、俺と…」
咄嗟に間に割って入ろうと思った。
でも、そんな資格が俺にはあるんだろうか。
葉山の気持ちなんて考えずに結婚して、両想いになったは良いけど幸せに出来ているなんて自信持って言えない。
未だにプレゼントも渡せてないのに。