秘密事項:同僚と勢いで結婚した
李side
元カレの顔を見た瞬間、いろんなことがフラッシュバックした。
告白した日、付き合って初めてデートした日、仲良く笑い合って過ごした日々も、プロポーズされて結婚を決意した日も。
全部全部、鮮明に思い出してしまった。
6年も寄り添った相手だから?
一度は結婚しようと思った相手だから?
忘れようとどんなに頑張っても簡単に思い出せてしまう。
でも。
本当に不思議なことに。
「私、ものすっごく素敵な旦那さんできたから不倫とか願い下げ」
一切、心が揺らぐことなんてなかった。
「………じゃあね、峻。お幸せに。」
もう二度と会うことはない。
薄情な人間だろうか。
さっぱりしすぎてるだろうか。
そんなこと、どうでもいい。
振り返ると、手で顔を覆いながら頬を紅潮させる夫がいた。
(………嬉しそう…)
元カレを使って夫との仲を深める、なんていう最低な女ポジションなんて知ったことか。
穂高くんを幸せにする。
これが出来れば私の人生は『はなまる』なのだ。