呼吸と鼓動
救急搬送
悠貴side
「田辺葵さん17歳。体育の授業中に倒れたそうです」
「バイタルサインは?」
「血圧82の60。spo2が92です」
「ゴホゴホッ…ゴホッ…ヒュー…ゴホゴホッ」
横になることができず前屈みで咳き込んでいる。
「お名前言えるかな?…声出せそう?」
じゃあ僕の手握ってみて」
微かに震える手で握り返してくれた。
「よし、意識はあるね。大丈夫だからね」
低酸素状態に陥っている。意識はあるものの朦朧としている。
「ネブライザー準備して」
「霧状のお薬が出てくるから口から吸って鼻から吐いてってしてね。慌てなくていいよ」
「喘息の疑いありです。酸素10Lで。ステロイド静脈して」
看護師に指示する。
「もう大丈夫だからね。お薬ですぐ楽になるからね」
過去にうちの病院にかかった記録はないので彼女の病歴や持病もわからない。
「どこか痛いところある?どこが辛い?」
「ハアッ…ハッ…アッ…」
「うん…何?ゆっくりでいいから教えて」
何か伝えようとしているが、言葉を発するのも辛そう。
肩にそっと手を置いて顔に耳を近づける。
「ハアッ…イタ…イ」
「了解、この辺りね。この辺も痛い?」
肺の辺りに手を当ててたずねる。
「痛くて息するの辛い感じ?…うんうん、痛み止めも入れようか」
同時進行で他に異常がないか診察していく。
来ていたジャージを捲ってタオルをかける。
「心電図付けるから、ちょっとヒヤッとするよ」
素早く心電図を取り付けて肺に聴診器を当てる。
「採血お願いします。緊急のタグ付けて検査回して。胸部CTの準備して」
肺に聴診器を当てて注意深く聴診する。
「酸素12Lに上げよう」
「首触るよ」
喉の腫れはそれほど強くないよう。
「CT準備できました」
「やだ…ゴホゴホゴホッ…こわいっ…」
段々と意識がはっきりしてきて恐怖心が出てきたよう。
苦しくて知らない場所で無機質な機械に囲まれて心電図の無機質な機械音、医者や看護師の緊迫したやり取り、様々な恐怖を感じているだろう。
「怖くなっちゃうよね。大丈夫。痛いことしないからね。背中に板入れるね」
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァッ…」
過呼吸気味になる。
「一瞬だけ頑張って。肺の写真撮るだけだからすぐ終わるからね。」
「終わったよ。一旦背中の板抜こうか。硬くて冷たいもんね。ちょっとだけ背中持ち上げるよ。
落ち着いてゆっくり呼吸して。そうそう上手」
「やだ…怖い…苦しいっ」
ちゃんと言葉を発することができるようになって一安心。
「少し楽になってきた?もう少しで息苦しいのも取れてくるからね」
酸素飽和度が上がってきて血圧も安定した。
喘鳴が完全に消えた訳ではないが経過観察でいいだろう。
処置台の脇にしゃがんで目線を合わせる。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
小さく頷く。
彼女の頭に触れて乱れた髪を直す。
色白の綺麗な肌と端正な顔立ち、潤んだ瞳。
とても儚いものに見えた。
「バイタルサインは?」
「血圧82の60。spo2が92です」
「ゴホゴホッ…ゴホッ…ヒュー…ゴホゴホッ」
横になることができず前屈みで咳き込んでいる。
「お名前言えるかな?…声出せそう?」
じゃあ僕の手握ってみて」
微かに震える手で握り返してくれた。
「よし、意識はあるね。大丈夫だからね」
低酸素状態に陥っている。意識はあるものの朦朧としている。
「ネブライザー準備して」
「霧状のお薬が出てくるから口から吸って鼻から吐いてってしてね。慌てなくていいよ」
「喘息の疑いありです。酸素10Lで。ステロイド静脈して」
看護師に指示する。
「もう大丈夫だからね。お薬ですぐ楽になるからね」
過去にうちの病院にかかった記録はないので彼女の病歴や持病もわからない。
「どこか痛いところある?どこが辛い?」
「ハアッ…ハッ…アッ…」
「うん…何?ゆっくりでいいから教えて」
何か伝えようとしているが、言葉を発するのも辛そう。
肩にそっと手を置いて顔に耳を近づける。
「ハアッ…イタ…イ」
「了解、この辺りね。この辺も痛い?」
肺の辺りに手を当ててたずねる。
「痛くて息するの辛い感じ?…うんうん、痛み止めも入れようか」
同時進行で他に異常がないか診察していく。
来ていたジャージを捲ってタオルをかける。
「心電図付けるから、ちょっとヒヤッとするよ」
素早く心電図を取り付けて肺に聴診器を当てる。
「採血お願いします。緊急のタグ付けて検査回して。胸部CTの準備して」
肺に聴診器を当てて注意深く聴診する。
「酸素12Lに上げよう」
「首触るよ」
喉の腫れはそれほど強くないよう。
「CT準備できました」
「やだ…ゴホゴホゴホッ…こわいっ…」
段々と意識がはっきりしてきて恐怖心が出てきたよう。
苦しくて知らない場所で無機質な機械に囲まれて心電図の無機質な機械音、医者や看護師の緊迫したやり取り、様々な恐怖を感じているだろう。
「怖くなっちゃうよね。大丈夫。痛いことしないからね。背中に板入れるね」
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァッ…」
過呼吸気味になる。
「一瞬だけ頑張って。肺の写真撮るだけだからすぐ終わるからね。」
「終わったよ。一旦背中の板抜こうか。硬くて冷たいもんね。ちょっとだけ背中持ち上げるよ。
落ち着いてゆっくり呼吸して。そうそう上手」
「やだ…怖い…苦しいっ」
ちゃんと言葉を発することができるようになって一安心。
「少し楽になってきた?もう少しで息苦しいのも取れてくるからね」
酸素飽和度が上がってきて血圧も安定した。
喘鳴が完全に消えた訳ではないが経過観察でいいだろう。
処置台の脇にしゃがんで目線を合わせる。
「よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
小さく頷く。
彼女の頭に触れて乱れた髪を直す。
色白の綺麗な肌と端正な顔立ち、潤んだ瞳。
とても儚いものに見えた。
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