呼吸と鼓動

悠貴side

めちゃくちゃ緊張している葵。

「朦朧とすると余計苦しく感じちゃうから眠くなる薬使わずにいくね。

喉の麻酔だけするからアーって口開けて。苦いけどちょっと我慢してね。残りの液はゴクンって飲み込んじゃっていいよ」

喉にシュシュッと吹きかける。


「そしたらこっち向きで横になろうか」

「じゃあ早速始めてくよ。危ないから動かないでね」

口から内視鏡を挿入していく。食道から胃の中へ。

「…ウッ」

苦しそうだが動かずにいてくれる。

「もう苦しいとこ過ぎたからね」

「はぁはぁはぁはぁっ…」

「大丈夫。普通に息してごらん。

しゃべれるからあーって声出してみて。

そうそう上手」

急に落ち着きを取り戻した。

「最後に食道見て終わりね」

何の問題もなく検査を終えた。


「よく頑張った。偉かったね。

何の異常もなかったよ。綺麗な胃だった。次回の診察の時に撮った画像見せるね。

ゆっくり起き上がろか。

後半静かだったね。初めてでこんなに落ち着いてる人なかなかいないよ」

「全然大丈夫だった。途中から胃カメラあるの感じなかった」

「それはよかった。僕上手だったでしょ?」

「うん!悠貴にやってもらってよかった」

「検査台高いから降りる時足下気をつけて」

王子様のように右手を差し伸べる。

「ありがとう。この後学校行ってきてもいい?」

「いいよ、気をつけて行ってきな」
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