呼吸と鼓動
喘息発作

悠貴side

このレベルはどう見ても外来じゃなくて救急なんだけどな。慣れてる僕だから対応できるけど。


唇と粘膜が乾燥していて脱水症状もあるよう。



「看護師さん、輸液とネブライザー用意してもらっていいですか?」


「葵、吸入器何回使った?」


「ゴホッゴホッ…に…」


「2回ね。

先生、発作から何分経ってますか?」



付き添ってくれた保健室の先生にたずねる。



「40分くらいです。

本人に救急車は呼ばないでほしいって言われて保健室のベッドで休ませていたんですが、意識が朦朧としてきたので説得してタクシーで」



「ありがとうございます。あとは病院に任せてください」



もう体力も気力も限界だろうな。


「葵ー、もうちょっと頑張るよ!」


うわー、これ血管入るかな。脱水と低血圧で血管がかなり細くなっている。



「腕強めに縛るけどちょっとだけ我慢してね。


「やめて…」


「痛かった?ちょっとだけ我慢して」


「しなくていい…」



一度駆血帯を緩めて、手を止める。

ここにきて治療拒否か。今まで頑張ってくれてたんだけど限界だったかな。



「血圧も下がって来てるし、このまま放っておいても自力で回復できる状態じゃないよ。

口から水分摂れるなら点滴は一旦考えてもいいけど…そうする?

看護師さん、紙コップにお水もらってもいいですか?」


「どうした?泣かなくていいよ。

それともどこか痛い?」


「…ごめん」


「ゆっくりでいいよ。むせないように」

咳き込んで上手く飲み込めない。






「後でゆっくり話聞くから今だけ素直に治療受けて?」

「…うん」


「手グーパーして。そうそう、グーパーグーパー、グッって握って。そのまま動かないで」



針の入りそうな血管を探す。唯一入りそうなのがここかな。


「ごめんっ、もう一回。

よし入った。

不安定な位置だからしっかりめにテープ貼っとくね」


「…寒い」


「洋服が汗でびっしょりだから脱いで病院の服に着替えようか。





医局で今日のことを大翔に話す。


「なんかね。救急科の看護師さんにいつも救急車使って税金の無駄遣いだって言われたらしい」

「酷いな。好きでそうなってる訳じゃないのに」

「話してくれればよかったのにって思った」

「まぁ、話しづらかったんじゃね」

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