呼吸と鼓動
持病

大翔side

緊急搬送されてきた葵ちゃんの処置にあたる。苦しそうで心が痛む。

病状がなかなかコントロールできずに何度も大きな発作を繰り返している。救急車で運ばれて来るのは今回で何度目だろう。


処置を終えて一度医局に戻ろうとした時、悠貴が来た。


「遅くなった。急患で手が離せなくて」

「診察時間なのに連絡しちゃってごめん。本人は上の空なんだろうけど、ずっと悠貴の名前呼んでたから、ダメ元で連絡してみた」


処置室のベッドで眠っている葵ちゃんに目を向ける。



「発作自体は大したことなかった。ただ発作をきっかけにパニックになっちゃったみたい」


「うん」


「ねぇちょっとこっち向いて」


なんとなく元気がない気がして顔を覗き込む。


「顔色悪いよ。心配」


悠貴もまた持病があった。

先天性の心疾患。幼少期は入退院を繰り返していたらしい。

医者になってからは俺が担当医をしている。
現在は服薬でコントロールできているがいつ悪化するかわからない状態。


「大丈夫。戻らないと」


逃げるようにその場を去ろうとする。


「無理するなよ」


「わかってる」


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