呼吸と鼓動
喘息発作

悠貴side

お風呂から上がってきた葵。
髪は濡れたままで首からタオルを掛けている。


「ケホッ…ケホッ…咳が出て苦しい」


「身体が温まって咳が出やすくなっちゃったかな。おいで」



ソファに呼び寄せる。



「寒くない?もう1枚羽織る?」


畳んだばかりのカーディガンを葵の肩に掛ける。


「吸入しようね」


「うん…ケホッ…」


家庭用の小型のネブライザーに薬剤を入れて電源を入れる。


「ケホッ…コホッ…コホッ…」




「しんどいね。冷えちゃうから髪乾かそう。ドライヤー取ってくるね」


ソファの後ろに立ってドライヤーで髪を乾かす。


「寝室行く?」


首を横に振る。


「横になったら苦しいからここでいい」


「わかった。僕そこで仕事してるね」


ダイニングテーブルを指差して言う。


しばらく仕事を続けていたがずっと咳き込んでいてだいぶ苦しそうだ。


「苦しいね」


隣に座る。



「息吸うと痛い」


「どの辺り?」


「この辺背中側まで全部痛い」



胸の辺りに手を当てて言う。



「痛いかしんどいね。寄りかかっていいよ」



背中をさする。痛みからか呼吸が浅い。


「ねぇ、もうやだ」



消え入りそうな声でそう言う。夜もちゃんと眠れなかったら精神的にもやられるだろう。



「しんどいね、泣くと余計苦しくなっちゃうよ」



涙をぬぐってやる。





テーブルの上で鳴っているスマホのアラームで目が覚める。


僕も一緒にそのまま眠ってしまったようだ。


身体がバキバキだ。


「おはよう」


「まだ寝てていいよ」


朝食を食べて身支度をする。


「僕仕事行くけど学校どうする?」


「行けたら午後から行く」


「無理しなくていいからね。いってきます」


「いってらっしゃい」
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