呼吸と鼓動
低体温症

悠貴side

退院したばかりは恐怖心で外を歩くこともできなかったが、今は1人で通学できるまで回復した。


「おかえり」


「ただいま。外寒かった」


しばらく経ってもソファに座ったまま動こうとしない。


「どうした?手洗っておいで」



「寒くて動けない…」



ふざけて言っているのだと思った。


「もう、そんなこと言ってないでw」


「…ちがう」



不安そうな目でこちらを見るもんだから、不思議に思って側に寄る。

少し顔色が悪いような気もする。指先に触れるとかなり冷えている。



「ちょっとごめんね」


襟元から手を入れて鎖骨の辺りを触れる。


「身体も冷えてるね」


暖房を強めて膝掛けをかける。


「温かいの入れたから飲んで。

やけど気をつけてね」



ホットココアを飲ませる。




体温を計ると平熱よりだいぶ低い。


「ハァ…ハァ…ハァ…」


呼吸が速まる。


「葵リラックスして深呼吸して」


手を握り続けていると段々と手に伝わる冷たさが和らいできた感じがする。


「震え止まったね。スカートのままだと寒いから着替えちゃおっか」


「…グスッ…怖かった」


「怖かったね。大丈夫だよ」


腕の辺りをさする。


「血糖値下がったのかもね。

筋肉量が減っちゃってるのもあるかな」
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