呼吸と鼓動
入院

悠貴side

その日は当直でそのまま病院に残った。仮眠室で休んでいるとPHSが鳴る。

病棟の看護師からだった。
葵ちゃんが発作を起こしているとのこと。

急いで病室へ向かう。

前屈みになって激しく咳き込んでいる。



「ネブライザー準備して」



看護師に指示する。



「お薬使えば楽になるからね」


「このくらい…ハァッ…大丈夫…です…ゴホッ」



こんなに苦しそうなのに大丈夫という葵ちゃん。もっと自覚を持ってほしい。



「大丈夫じゃないよ」



指にパルスオキシメーターをつけて酸素飽和度を測ってみると93~94を行ったり来たり。


これ以上下がると危ない。



「いつも…だから…ゴホッ」


「今はあんまりしゃべらないで」


しゃべれば余計に体内の酸素を消費してしまう。

ベッドの横にしゃがんで聴診器を当て聴診する。

ゼーゼーと喘鳴が確認できる。



「ネブライザー準備できました」


「葵ちゃんここからお薬が出るから軽くくわえて吸って」


マウスピースを口元に近づける。


「楽に呼吸しててね」


薬が気管支を刺激してより一層咳き込む。


「もう少しで薬効いてくるから頑張って」


空いている左手で背中をさすりながら励ます。


「気分悪くなってない?」


顔色を観察する。少し顔色が良くなったようだ。

もう一度酸素飽和度を計測する。



「一応酸素マスクつけておこう。さっきはキツく言っちゃってごめんね。もうお話しても大丈夫だよ」


「こんな夜中にごめんなさい…」


そんな風に思わなくていい。



「家でもいつもこうなってたの?」

「でも我慢してれば治るから」


「それはね、すごく危険なことだよ。だから迷惑なんて考えずナースコールしてほしい。僕たちはそれが仕事だから。それより我慢して手遅れになってしまうことの方が心配」



家で呼吸困難になったりしなくて本当によかった。
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