ずっとずっと、そばにいる
彼はだんだんと私の方に歩み寄ってきた。
私は、そんな彼から顔を背けて、スタスタと奥の本棚へ向かった。
その時だった。
いきなり後ろから、痛いくらいの強さで、ぐいっと手首を引っ張られた。
「…っ」
その瞬間、後ろの棚に体ごと押し付けられた。
大きな音を立てて、何冊かの本が床に落ちる。
「っ」
とっさに顔を上げると、そいつの両腕が、私の頭のすぐ横にあった。
あまりの距離の近さに、ぶわっと顔に熱が集まったのが自分でも分かる。
そして、その濃褐色の瞳は、どこか寂しそうで。
目を逸らしたかったのに、逸らせなかった。
まるで、催眠術にかけられたみたいに、自分の体は固まっていた。
すると、ためらいがちに彼の口が重く開いた。
「…なんで…俺を避けるんだ」
彼の声は、低かった。