ずっとずっと、そばにいる


もしも、昔に戻れたら。

そんなこと、できる訳がないのは分かってる。

でも、あの時のような、楽しかった頃に戻りたいと、何度も考えてしまう自分がいる。

もしもあの時、お父さんが心臓発作で倒れなければ。

お父さんが亡くなってしまったあとも、あの会社が倒産しなければ。

今でもあの家は、昔みたいに楽しかったのかな?

私がこうして毎日をバイトで費やす必要もなかったのかな?

そしてもし、駿が遠くに行ってしまわなければ。

もし、もっと早く戻ってきてくれていれば---。




「芽稲ー」

「あっ!駿くん!」

駿を見つけるやいなや、私は駿にイノシシのように突進して抱きついた。

「うが、元気だなぁ芽穂は」

「えへへへへ」

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