ずっとずっと、そばにいる

どうして私は、そういった家庭に生まれることが出来なかったのだろうか。

……静かな朝は、そんなことを連想させるから嫌いだ。

なら、いっそのこと寝坊して、それどころではなくなる方が、私にとってはよっぽど良いのかも知れない。

なんだか気持ちがスッキリしないまま、私は準備を終えて、家を出ることにした。


ガチャ。

今日は、行ってきますも、言わなかった。

私は一度こういった思考になったら、とことんネガティブな事ばかり考えてしまう。

少しうつむき気味になりながら、自転車のキーを差し込み、力なくペダルを回す。

すると、後ろの方から不意に、声が聞こてきた。


「気をつけてね。行ってらっしゃい」


その声は、私の心を、強く、踏みつけた。


「うん、行ってきます!」


キキーッ!

耳に響くブレーキ音とともに、私はその場に止まった。

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