夜色、線香花火
「……なんで、目が合ったの」
「おれとお前が、それぞれのほうを見たから」
「違くて。そうじゃなくて。なんであたしが顔をあげた瞬間に、目が合うの」
慎太郎の花火の先端が、ぽとりと落ちた。
夜色の前髪をかきあげ、「あー」と、掠れたような声を出す。
「おれが、ずっと、結実のこと見てたから」
自分が大きく息を吸い込んだ、その音だけが響く。波は静かになっていて、さっきまでは都合よく騒いでくれていた花火も、いまはお休み中で。この空間に、あたしと慎太郎しかいない。
「結実、願いごとした?」
話の変化についていけず。
「し、てない」
戸惑いが全面に出た。悔しい。